今回は単品管理思考法のSTEP⑷、「実施実行(工夫をしてやってみる)」を解説していきます。
毎回確認していますが、単品管理思考法は『すれ違い、もったいないを少なくする方法、そして重なり合っている「満足度」を大きくする方法』です。
単品管理思考の流れで疎かになってしまうところがこの「実施実行」です。
このSTEP⑷実施のポイントを3つ、下記に挙げます。
① 仮説を相手に伝える方法を考える
② 相手に行動してもらうアプローチ
③ 届くまでやる、やりきる
前回のSTEP⑶死筋排除では、能力や資源(お金・場所・モノなど)は有限であり、必要がないモノ・コトは時として有害であることから、立てた仮説を実行する前に要らないものを削る重要性をお伝えしました。
では死筋排除をした後にどう実行していくのか、さらには実施実行には何が大切なのかをみていきましょう。
仮説を相手に伝える方法を考える
復習ですが、単品管理思考では5つの流れについて最初に確認しました。
⑴ 情報収集(必要な情報を獲りに行く)
⑵ 仮説構築(情報をもとにどうすべきかを考える)
⑶ 死筋排除(いらないものを削る)
⑷ 実施実行(工夫をしてやってみる)
⑸ 検証 (上手くいったかどうかを確認する)
この5つの流れの中で「仮説-検証」という2つのフレーズはよく聞く言葉かと思います。
これは単品管理思考だけではなく、ビジネスの世界では非常によく使われます。
この2つのフレーズは重要なポイントとして使い勝手のよい言葉ですが、だからこそ見逃してしまう部分もあります。それがこの「実施実行」です。
仮説を立てることに注力し、その後の「伝える方法」を疎かにしてしまうと、どんなによい仮説であったとしてもそれが届かない、つまり成果につながらないことがあります。一方で、成果が出なかった時に「仮説が間違っていたんだ」と検証がズレてしまうこともあります。
#10 コミュニケーションの重要性 のマーケティング・コミュニケーションでも述べたとおり、「こちらが伝えたつもり」でも相手に伝わっていなければそれはコミュニケーションが取れたことにはなりません。
セブン-イレブンの魚肉ソーセージの事例(#14 単品管理思考法②|情報収集)でも紹介しましたが、いくら「調理の素材」として魚肉ソーセージを使っている、と分かっても、これを売り場を変えずにそのままおつまみコーナー置いておいたとしたらお客様には伝わったでしょうか。情報収集から仮説を基に、「豆腐や納豆、練り物などの生活デイリーと呼ばれる棚に並べる場所を変える」という行為があったからこそ売上が3倍になりました。
この実施実行、相手に伝えるには五感のどこに訴えかけるのかを考える必要があります。
視覚:どうすれば見てもらえるか、どのように見せるか
聴覚:どうすれば聞こえるか、どのように聞こえるか
嗅覚:どのように匂いを嗅いでもらうか、良い匂いか
味覚:味わってもらえるか、相手が求めている味か
触覚:触れてもらいやすいか、どのような感覚になるか
先ほど挙げた魚肉ソーセージの事例は視覚ですが、他にも
・価格の高い商材は高級感のある演出
・食品を置く棚やケースは清潔感を保つ
・相手に喜んでもらいたいプレゼントは包装にこだわる
など、様々な見せ方、見られ方があります。
聴覚についても、
・相手が聞きやすい声や音量かどうか
・受け入れやすい言葉遣いか
・伝える、声掛けをするタイミングはどうか
など、工夫する余地は山ほどあります。
このように、仮説を立てるだけではなく、相手に伝わりやすいシーンを五感で演出することが単品管理思考ではとても重要となります。
相手に行動してもらうアプローチ
相手に伝える方法としては五感に訴えることが有効であることをお伝えしました。
では次に、相手に行動してもらうアプローチについて考えていきます。
ここでは商品、モノやサービスを提供していると仮定しますが、このお客様の行動について、購入をするまでの行動を説明したAIDMA(アイドマ)という考え方を紹介します。
これは1920年代にアメリカの著作家、サミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱された概念で、ユーザーの購入決定プロセスを整理して説明したものです。
Attention(注意)
注目し、商品やサービスについて気づくことをいいます。
お客様の目が留まるよう、商品やサービスについて、「目に入る、耳に聞こえる、匂いを感じる…」などの伝わるアプローチが無ければこの購入への初めの段階でつまづいてしまいます。
Interest(関心)
相手がその商品やサービスに気付いたら、これに興味を持ってもらうことです。
相手のインサイト(人を動かす無意識の中の心理)に訴えかけるキャッチコピーなどを通して「気になるな」、と思ってもらうことが大切です。
Desire(欲求)
欲しいという欲求が起きるタイミングです。
注意、関心まで持ってもらったら、「この商品(サービス)をつかったらこんな良いことがあるだろう」というイメージを頭の中で作り、手に入れたい(やってみたい)と感じてもらうステップです。
Memory(記憶)
欲しいという欲求、商品の魅力を憶えてもらうこと、さらにはこれを呼び起こします。
その場では購入に至らない場合も少なくありません。これを2回、3回と広告や展開などでこの商品、サービスとの接点を持ってもらい、欲しかったという記憶を思い出してもらいます。
Action(行動)
商品、サービスを購入するという最終段階です。
ここでは「いかに買いやすい環境を作るか」という提供の場の設計が重要となります。
行動の手前で「面倒だな」「買い方や使い方が分からないな」と感じると人はこれを躊躇します。
この迷う要因を取り払い、実際に行動してもらいます。
これらの流れの中で、どれか一つでも欠けてしまうと行動につながる確率は大幅に下がります。
だからこそ、ひとつひとつのステップにこだわり、相手にアプローチができているかの徹底度を上げていく必要があります。
このAIDMA以外にも、ネット時代を反映した購買行動を分析したAISASモデルという概念を2005年に電通が提唱していますが、こちらはまた機会があれば解説します。
届くまでやる、やりきる
これまでの実施実行は伝えるというテクニックの部分でした。こちらもとても重要です。
ただ、何よりも大切なのは、自分自身が情報を収集し、仮説を立て、死筋排除をしてまでやってきたことを相手にどれだけ本気で伝えたいかという『想い』、です。
この想いが強ければ強いほど、実施実行について深く考えることができますし、そしてそのストーリー(物語)が相手に伝われば共感していただける人が増えいきます。
合理化された部分も重要ですが、ぜひこの『想い』の部分も忘れずに届くまでやる、やりきることを意識してみてください。
今回はここまでです。次回は単品管理思考法の最後のステップ、検証についてとなります。
更新を楽しみにお待ちください!
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