今回からシリーズでお伝えする単品管理思考法の第1回、本日のテーマは「Tanpin-Kanriとは?」です。

単品管理という言葉、小売業に携わっている方は特に聞いたことがある方も多いかと思います。

単品管理は1960年~70年代にかけて、大西衣料(現・大西)やベニマルのABC分析などで行われたといわれており、小売業においては昔から重要であると捉えられてきました。
また、コンビニエンスストア最大手のセブン-イレブンではこの単品管理を徹底し、これを仮説-検証として広く知られているところです。
このセブン-イレブンの単品管理は「Tanpin-Kanri」として世界最高峰のビジネススクールであるHarvard Business Schoolでも事例研究として取り上げられた考え方であり、セブン-イレブンをコンビニエンスストア業界トップの座に導いた、その他の様々な強みの土台となるものです。

この単品管理という言葉にはいくつかの捉え方があります。

①商品管理(ユニットコントロール)としてのシステム
サイズ別・スタイル別・色別・生地別・値頃別などに細分化した管理方法
②在庫管理としての考え方
過剰在庫や過少在庫を起こさないために、どのような方法で発注すればよいかを決定する管理方法
③マネジメントプロセスとしての手法
商品を仕入れてから販売までの一連のマネジメントプロセスを最も効果的に行う商品管理の方法
④マーケティングとしての考え方
顧客の問い合わせや購買履歴情報を活用したマーケティング戦略に活用する手法

マーチャンダイジングやマーケティングにおいて、この捉え方はどれも正しく、手法として不正解はないと思いますが、目的としては様々です。

前述のセブン-イレブンでは③と④の意味合いが強く、以前のblogで上げたSECIモデルを提唱する一ツ橋大学名誉教授の野中郁次郎先生の著書の中ではセブン-イレブン(セブン&アイ)について次のように書いています。

セブン-イレブンが1店舗あたりの平均日販で他チェーンに大差をつけ、消費税増税後も既存店売上高で他チェーンが前年割れするなか、セブン-イレブンだけが増加を続けたほど、強みを発揮するのは「仮説・検証」のサイクルをスパイラルに回し、顧客のニーズやウォンツに徹底して応えるという「型」が定着しているからです。
トップ層における経営判断から、新規事業の開発、本部での商品開発、店舗における商品発注に至るまで、「仮説・検証」の「型」を実践する。商品発注については、アルバイトやパートのスタッフ一人ひとりが自分の判断で行うよう任されます。

出典「全員経営-ハイパフォーマンスを生む現場 13のケーススタディ」野中郁次郎・勝見明 日本経済新聞出版社

この考え方を企業全体で意識し、企業文化として根付いていたことこそがセブン-イレブンをコンビニ業界のトップとして導いた大きな要因であると思います。

単品管理思考法

この単品管理という考え方には様々な捉え方があると前述しましたが、私が考える単品管理の目的は『欲しい商品を、欲しい時に、欲しい数だけ用意すること』、つまりはもったいないを無くすことであると思います。
これは在庫管理や商品管理の枠を超えて応用できる考え方であり、単品管理思考法という型とします。
大きくマクロで捉えると需要と供給のバランスとなりますが、モノを売る、という点においては品揃えとお客様のニーズがピタリと合うことで販売に繋がります。
この品揃えとお客様のニーズにおいてミスマッチが起こると販売機会のロス、そして商品の売れ残りによる値下げによるロス、さらにはその商品を廃棄にするロスが発生します。
このロスは誰の利益にもならず、損失として捉えられます。
この損失=もったいないを無くすための考え方こそ、単品管理思考法です。

単品管理思考法の目的とその効果

例えば恋人への誕生日プレゼントを贈る場合で考えてみましょう。
(ここでは男性から女性に贈ると仮定します)

予算は1万円です。
男性は1万円で買える、恋人が喜びそうなものとして素敵な色柄のマフラーを用意しました。
誕生日当日、恋人とお洒落なお店で食事をしていよいよデザートという時にここぞとばかりに用意しプレゼントを渡します。
(さぁ、喜んでくれるだろう)とワクワクしていましたが…

彼女の顔は嬉しそうながらも期待していた喜びようとは違いました。
実は彼女は最近お気に入りのマフラーを買ったばかりでした。
心の中では化粧品が欲しいと少し思っていました…

男性の「喜ばせたいという気持ち」、女性の少し「がっかりとした想い」、とてももったいないと思いませんか?
どちらも悪意はありません。ただ少しすれ違ってしまったのです。
このすれ違い、もったいないを少なくする方法、そして重なり合っている「満足度」を大きくする方法、これが単品管理思考法です。

単品管理思考法のプロセス

ではこの「もったいない」を無くすためにはどのようなプロセスが必要でしょうか。
これを単品管理思考法のプロセスとして5つのステップで考えます。

単品管理思考法のプロセス

⑴ 情報収集(必要な情報を獲りに行く)
⑵ 仮説構築(情報をもとにどうすべきかを考える)
⑶ 死筋排除(いらないものを削る)
⑷ 実施実行(工夫をしてやってみる)
⑸ 検証  (上手くいったかどうかを確認する)

この各ステップについて、今後順番にblogにて解説していきます。
今回はここまでです。次回更新を楽しみにお待ちください。

今回もお読みいただきありがとうございました。
次回は2022年3月2日更新予定です!


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