今回は単品管理思考法の最後の部分、STEP⑸の「検証(上手くいったかどうかを確認する)」を解説します。

これまでの単品管理思考の流れである
⑴ 情報収集
⑵ 仮説構築
⑶ 死筋排除
⑷ 実施実行
までを進めるとします。すると、どのような状況でこの思考のフレームワークにもよりますが、必ず結果が出てきます。
この結果は成果が上がったものとそうではないものがあるでしょう。
これを次にどう繋げるか、その大事な役割を果たすのが、この最後の「検証」です。

STEP⑸検証のポイントは下記の3つです。

① 成果だけでなく、実施実行の程度を確認する
② 因果関係と相関関係を見極める
③ データや成果の背後に潜むコトを把握する

この『単品管理思考』のテーマでは、会社の経営や新しい事業を立ち上げること、仕事のプロジェクトを行うなどの大きなものだけでなく、日々の仕事や商売、さらにはプライベート(彼女へのプレゼント)なども含めて、様々なシーンでこのフレームが使えるという話をしてきました。
そして事前準備や仮説を立てて徹底して実行するなど、この単品管理思考を使う場面は様々あることを理解いただいたかと思います。
一方、この流れできちんと実施実行まで行えた場合でも、この最後の「検証」をしていないことが多いのが現実です。いわゆる「やりっぱなし」というものです。これは非常にもったいないなと感じます。なぜならこの「検証」が、最大限の効果として次に繋げる唯一の方法だからです。

日々の仕事では検証することで次に「より上手くできる可能性」が大きくなるでしょう。
次に新しい事業を立ち上げることが無くても、きっとそのプロセスでの学びは取り組んだ人にとっては大きな武器となるでしょう。
彼女へのプレゼントでは(喜んでもらえてももらえなくても)次の機会にその学びを活かせるでしょう。

「失敗すればするほど、我々は成功に近づいている」とは発明王で有名なトーマス・エジソンの言葉です。失敗したのならば、なぜ失敗したのかを検証して次に活かす。成功しても、より良い方向に進めるために(本当に成功だったのかも含めて)検証をする。

実施実行でやり切ったら、最後にきちんと検証をすることが単品管理思考の最後の大仕事です。
では具体的にどうしたら次に活かせる検証ができるのかを3つのポイントで解説していきます。

成果だけでなく、実施実行の程度を確認する

例えば商売をしていて、何か商品を販売しているとします。
ある商品(ここではチョコレートとします)について、10個仕入れて8個売れた、という結果が出たとしましょう。

さて、この結果至るまでに、
⑴ このチョコレートは20代の独身女性をターゲットとしている
  どうやら巷では流行っているらしい
  自分のお店の周りには若いOLさんが多く働いている会社がいくつかある
⑵ 小腹が空いた時に食べれるので、朝の来店時に飲み物と一緒に買われるのではないか
⑶ 商品をきちんと目立たせて並べられるよう、売れていない商品を売り切って場所を空けよう
⑷ 商品が届いてから女性の目線に展開してPOPをつけた
という流れがあったとします。

10個仕入れて8個売れたことを「8個も売れた」のか、「2個売れ残ってしまった」と捉えるかによって検証の視点は変わってきます。

「2個売れ残ってしまった」と考える場合
・並べる場所は合っていたのか、お客様に気付いていただけたのか
・POPは気付いてもらえたのか、気づいてもらえた場合、買ってみたいと思うPOPだったのか
・他に並べる場所はなかったか

「8個も売れた」と考える場合
・本当に20代の女性が買っていたのか
・朝の時間帯に売れていたのか、一緒に買われていた商品は何か
・並べる場所が違えばもっと売れたのではないか

これ以外にも検証の視点は様々ありますし、すべてを検証するのは難しいかもしれません。
検証する時間や資源が大きい場合には以前紹介したロジックツリーで検証を深堀りすることもできます。
ただ、限られた時間で検証を効率よく行うためにも、⑴~⑷のSTEPをどう考えてきたかが重要となります。これがあるからこそ、自身が集めた情報、これに伴って立てた仮説、そして行為が正しかったのか、ズレていたのかが確認できます。
「仮説なくして検証はできない」と言いますが、この単品管理思考のプロセスがあるからこそ、検証が活きてくるということでしょう。

因果関係と相関関係を見極める

因果関係とはふたつの事柄のうち、片方が原因となってもう片方が結果として生じた場合いいます。
相関関係とは二つの事柄について片方の増加に伴ってもう片方も増加する傾向にあるなど、何らかの関連がある可能性がある場合をいいます。

因果関係が直接の原因になることに対して相関関係はお互いに影響が無い場合もあり、ここを見極めないと誤った検証をしてしまうことが起こり得ます。

ここでも例を挙げましょう。
「TVゲームを1日1時間以上やる子どもは学校の成績が悪い」というデータがあったとします。
さて、この
「TVゲームを1日1時間以上やる」ことと「学校の成績が悪い」ことは因果関係でしょうか。

【原因:TVゲームを1日1時間以上やる】ことで【結果:学校の成績が悪くなる】

落ち着いて考えるとこれが因果関係ではないことがお分かりになるかと思います。
確かにアンケートや調査結果ではこのようなデータはよく見られます。しかしながら、これは「相関関係」です。TVゲームを1日1時間以上やっている子どもすべてが成績が悪いということではありません
「TVゲームを1日1時間以上やることにより、勉強時間が少なくなる」ことによって学校の成績が悪くなるとなれば、因果関係と考えられるでしょう。(厳密に言えば、勉強時間が少なくても効率的な方法で学力が向上する、能力の問題など様々あります)

因果関係と相関関係を見極めるには2つのポイントでチェックします。

① 反事実を確認する
② 操作変数かどうかを確認する

反事実とは、反対から考えてみることです。
先の例でいえば、
「成績が悪い子どもはTVゲームを1日1時間やっている」
としてみます。そうするとどうでしょうか。おそらくそうとも言えないのではないか、と疑問が出てきます。これでは原因と結果ではない、ということで相関関係の可能性が高くなります。

操作変数とは、直接に原因とはならず、原因に対して影響を与える要因である場合です。
こちらは先ほど例で挙げた通り、「TVゲームを1日1時間以上やることにより、勉強時間が少なくなる」から成績が悪い、となります。
TVゲームを1日1時間以上やることが直接の原因ではなく、これによって勉強する時間が少ないことが原因です。となれば、この「TVゲームを1日1時間以上やる」ことは原因に対して与える影響、つまり操作変数となります。

起こった結果が何によって成果が上がったのか(または下がったのか)を考える際に、必ずこの因果関係かどうかを確認することによって次に修正するポイントを見つけることが大切です。一方、誤った要因を「原因」と捉えて手を打ってしまった場合、効果が少ない、または出ないことは想に難くないと思います。

データや成果の背後に潜むコトを把握する

企業の成績を把握する際にはよく「前年比」や「伸び率」、「平均」などをよく使うかと思います。絶対数(売上〇〇万円、販売数〇〇個など)に対してはもっともらしい数値ですが、このデータには要注意です。

数値を判断するにはまず下記の注意点を意識します。

・そのデータは判断するに足る量が揃っているか
・「比較」の対象はどこか
・「率」(伸び率・成長率・増加率など)の期間はどこを基準としているのか
・平均の分母はどのくらい大きいか、その分布はどうなっているか

例えば最後の平均の例を挙げれば、
あるテストを7人の平均点は70点であった場合、下記の点数分布が考えられます。

❶58点、63点、65点、70点、74点、79点、81点
❷0点、20点、70点、100点、100点、100点、100点

どちらも合計は490点となるため、平均点は70点です。
ではこの70点の持つ意味は同じでしょうか。
❶であれば70点で平均点か、と安心できるかもしれません。(安心するかどうかはその人次第ですが…)
❷は少し極端な例ですが、おそらくこの点数分布を見ればきっと満足できるものではないはずです。0点の人は名前を書き忘れたのかもしれません。

詳しくは統計学という学問に譲りますが、この「分布」がどうなのかまで意識しているか、それとも❶のイメージだけで平均を捉えるかによって検証を次に活かすプロセスは大きく異なってきます

この「平均の罠」以外も、数値の裏に隠された意図を読み取ることはとても重要です。
この章の一番始めに上げた例での「ある商品を10個仕入れた場合」で考えてみましょう。
10個売れた場合はどうでしょうか。もちろん様々な準備をして売り切れるのはとても嬉しいことでしょう。ただ、この「売り切れた」にもきちんとした検証が必要です。

・本当に10個で足りたのか、もっと必要だったのではないか
・他の商品が売り切れてしまったからこの商品が売れたのではないか
・想定していたお客様以外の客層や時間帯に売れていたのではないか
・他の商品の売れ行きが悪くなったのではないか

これ以外にもたくさんの検証の切り口があります。
表面的な「もっともらしい数値(データ)」は時として人の判断力を奪います
だからこそ、検証によって「本当にそうか?」とデータを疑い、その背後にどんなコトが隠されているのかを読み取る力を育てていきましょう。

最後に、私が尊敬する経営者である鈴木敏文氏の語録を紹介します。

「売り手の満足=顧客の不満足」
「問題意識を持って見ないデータは、データなどと呼ばせない」
「POSデータは仮説を検証するためのものである」
「ニーズは多様化していない。時間軸の断面を切り取れば日本人ほど画一的な国はない」

出典:勝見明著『鈴木敏文の統計心理学』プレジデント社より

どれも検証に対して示唆に富む言葉ではないでしょうか。

ここまでがSTEP⑸検証のポイントでした。
さて、せっかく一生懸命取り組んだ結果に対してしっかりと検証を行うことで本質的な部分で次に繋げるか、やりきったことに満足して次に正しく活かせずに迷路に迷い込むか、どちらがよいでしょうか。
この検証のスキルは身につけておいて損はしません。ぜひ日々意識してみてください。

単品管理思考とは

ここまで単品管理思考について長く書いてきました。
この「もったいない」を無くすフレームワークは様々な場面で使えることはこれまでご説明した通りです。私自身のビジネススキルもこれを身につけることで大きく成長したと感じています。

「PDSサイクル」「PDCAサイクル」「OODAループ」「仮説思考」などなど…

世の中には様々なフレームワークが存在し、それを型として身につけることで頭を整理できます。
ただ、色々と学んでみても、この単品管理思考が軸に置くことで「あぁ、そういうことなんだな」と理解することができました。
『単品管理思考』を身につけて使いこなし、皆さんが持っているスキルがさらに成長することを思うとワクワクせずにはいられません。ぜひチャレンジしてみて下さい!

ブログでの発信のため、すべてをお伝えするのは難しく、ポイントだけを整理して書きました。
この単品管理思考を身につけたい!と思った方は弊社でもこれをビジネススキルとして身につく研修も実施しています。ご興味をお持ちの方はお気軽にお問い合わせください。

今回はここまでです。次回の更新を楽しみにお待ちください!


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