今回は単品管理思考法の第2弾、STEP⑴の「情報収集(情報を正しく捉える)」がテーマです。

さて、前回は、単品管理思考法とは『すれ違い、もったいないを少なくする方法、そして重なり合っている「満足度」を大きくする方法』であることをお伝えしていきました。
そして最後には単品管理思考法の5つのステップをご紹介しました。

ではこの満足度をより大きくしていくためにはまず何が必要かを考えていきます。
STEP⑴は必要な情報を取りに行くこと=情報収集です。
この情報を集めることについては「当たり前」だと思われるかもしれません。そして「やっているよ」と感じている方もいらっしゃるかと思います。
しかしながら、この「当たり前」が曲者です。この理由をこの後整理していきます。
まずはこのSTEP⑴のポイントです。

情報収集のポイント
① Factを掴む(事実をありのままに見る)⇒ 気づきを得る
② その道の『プロをして』を忘れる
③ 人に聞く yes but ではなく yes and で考える
④ 情報を共有できる仕組みを作る
⑤ 定量・定性の両面からの情報を収集する
⑥ データがある場合は活用する

この6つのポイントの中で①~③について説明していきます。

Factを掴む(事実をありのままに見る)⇒ 気づきを得る

Factとは実際に起こった、または起こりうる事実のことです。人は事実を見たり、聞いたり、読んだり、嗅いだり、味わったり、触って感じたりします。この感覚は人によってどれを優位に感じるかは違うといわれています。
この事実については #7 交通整理、できていますか?で説明した『現状』としたありのままの状態に近いものとして捉えてください。
この事実を見る時、人は必ずこれまでの経験やその時の状態などによって無意識に膨大な情報を処理します。その際には本来見えているべき事実も隠してしまいます。

上は有名な隠し絵の一つ、「妻と義母」ですが、奥を向いている若い女性と横向きの老婆が描かれています。これも人それぞれによってどちらに気づくかは異なります。

事実をありのままに捉えられない要因として、心理学の要素としては「選択的注意」と「基本的帰属錯誤」があります。

【選択的注意】
注意をはらったことについてはしっかりと分かるが、注目していないことについては入ってこない
【基本的帰属錯誤】
誰かの行動などの事実を見るとき、その行動の原因を性格などのその人自身のせいとし、状況などのその人の置かれている環境をあまり考えない

この無意識に削除している情報をなるべく多く捉えて気づきを得るためには4つの目で見ることが必要です。

Ⅰ.鳥の目
上から見ることで全体を把握する
Ⅱ.魚の目
流れを見ることでなぜそうなったのか、これからどうなるのかを感じ取る
Ⅲ.虫の目
細かい部分を見ることで全体にどう影響を及ぼしているのかを知る
Ⅳ.蝙蝠(こうもり)の目
感じたことに対して「本当にそうか?」と疑い、別の側面から見る、考える

これらの4つの視点を上手く切り替えることにより、これまで気づかなかった事実の側面を把握することが情報収集の第一歩です。

その道の『プロをして』を忘れる

事実をありのままに見る、と近い部分になりますが、人はこれまでの経験を基に現状を判断します。
例えば前述の#7で挙げた例では、「売上40万円」が現状=事実でした。これはコンビニエンスストアではあまり高い売上とは言えないかもしれません。一方で個人でやっている飲食店など、普段5~10万円の売上(できちんと儲かるビジネスモデル)のお店から見ると、売上40万円という数字はとても良い売上となります。

これまでの経験、スキルなどはあなた自身が取り組んできた結果であり、誇るべきものです。しかしながらこの経験、スキルが邪魔をしてしまい、ありのままの現状から気づきを得られずに今まで自分が考えていたことが正しかったことの確認となってしまうこともあります。
この要因として、人は「認知的不協和」と「確証バイアス」があるといわれます。

【認知的不協和】
自分の考えと反する事実や情報があると「正」と「反」が矛盾して不快な気持ちになるので、どちらかを捨ててこの不快な状態を解消しようとする
【確証バイアス】
自分の考えや思い込みに固執し、一度確定してしまうとそのフレームからなかなか抜け出すことができなくなる

この経験が事実を正しく捉える邪魔をする一例として、セブン-イレブンの魚肉ソーセージがあります。

長野県の魚肉ソーセージの消費量が全国で一番多いにも関わらず、セブン-イレブンの店舗での売上は特に高くありませんでした。
魚肉ソーセージの陳列場所は東京の本部が決めた商品分類通りにお酒のつまみ類のカテゴリーである「珍味・缶詰類」の売り場に陳列されていたのです。
しかしながら長野県の現地採用の女性社員に魚肉ソーセージの食べ方を聞いたところ、のり巻きやポテトサラダの具、天ぷら、煮物、ピザトースト等々、料理の素材・具材として使っていたことが分かります。
そこで豆腐や納豆、練り物などの生活デイリーと呼ばれる棚へ移したところ、売上は3倍以上に増えたといいます。
(出典:鈴木敏文「わがセブン秘録」プレジデント社 2016 P106)

このような自分自身で気づきを得るためには以下の相互関係が必要です。

Unlearn(学んだことを意識的に忘れる)

Acceptance(自分の反対意見でも受け入れる)

Learn(事実から学びを得る意識を持つ)

どこから先に、というものではなく、これを自分自身の意識の中でスライドさせていくことが新たな気づきを得るポイントです。

人に聞く yes but ではなく yes and で考える

これは私が前職の先輩から教えていただいたものですが、非常に重みのある言葉だと思っています。
高校生、大学生までの学びではどちらかというと先生から教わり、その通りにやっていくというものが多いと思います。(最近は自ら考える力を育てるという流れになっているようです。)
一方で社会に出ると、先輩や上司、取引先、さらにはニュースや本などなど、様々な学びがあります。そしてそこでは先ほど挙げた意識的、無意識的にバイアスをかけていいます。経験から自らの価値観に沿って判断してしまうこともあるでしょう。

そこでは、
「うんうん、そうだよね。でも…」(Yes,but…)
と相手の意見を否定して捉えていることも少なくありません。
これを、
「うんうん、そうだよね。それなら…」(Yes,and…)
で捉えられたらどうでしょうか。
否定してしまって新たな広がりがない未来と、相手の意見も取り入れながら昇華させる(広げていく)、後者であれば今までになかった価値が生まれる可能性があります。
ぜひ意識してみてください!

今回はここまでです。次回は情報収集の後半のステップについてです。
更新を楽しみにお待ちください。


今回もお読みいただきありがとうございました。
次回は2022年3月14日更新予定です!
(これまでは水曜日更新でしたが、今後は毎週月曜日の朝に更新予定です)


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