今回は単品管理思考法のSTEP⑵、「仮説構築(情報をもとにどうすべきかを考える)」を解説していきます。
単品管理思考法とは『すれ違い、もったいないを少なくする方法、そして重なり合っている「満足度」を大きくする方法』であることをお伝えしていきました。
情報収集のパートが長くなってしまいましたが、この後のステップを簡単に解説していきたいと思います。
今回のSTEP⑵仮説構築のポイントです。
① Goalから考える
② 自分ゴトで捉え、インサイトを見つける
③ 間違いを恐れない
情報収集では事実をありのままに見て気づきを得ることやYes, andで考える、定量・定性両面の情報を得ることなどのポイントがありました。
そしてこれをロジックツリー、フレームワークなどで整理していくプロセスをご紹介しました。
ただし、情報というものは集めようと思えばキリがなく、そしてすべて必要な情報が集まるかというとそうではありません。
そこで「仮説」をどう構築していくかを考えていきます。
Goalから考える
仮説構築の重要なポイントは、まずGoalから考えることです。
すべての情報が手に入るわけではありません。かといって、何も決めずに、何も動かずにいるわけにもいきません。
例えば彼女の誕生日、相手の欲しいモノが分からないからといってプレゼントを買わない、という選択肢はあるでしょうか?
あるいは上司から「この資料をまとめておいて」「このプロジェクトを進めておいて」と言われた場合、「情報がないからできません」で納得してもらえるでしょうか?
明日のお客様の数が、あるいはどんな方が来店するか、分からないから商品を発注しない、ということもあり得ません。
仮説構築とは「〇〇なのではないか、と少ない情報からGoalを創る」ことです。
ここでよく勘違いされるのは、過去〇〇だったから□□になるだろうという「予測」と一緒にされる場面です。
例えば昨日おにぎりの梅が10個売れたから明日も10個売れるだろう
これは「予測」であり「仮説」ではありません。
解釈は諸説ありますが、私の考える「予測」とは過去の延長線上にあり、これが経験上同じ、または少し変化して起こる可能性です。
そして「仮説」とはこういうコトが起こりうる(または求められている)から〇〇の動きがあるだろうというものです。
先の例で「仮説」を考えてみると
気温が30℃で今日よりも5℃高くなり体感気温が高く、近隣にイベントがあって高齢者の方の来店者も増える。
梅のおにぎりが普段高齢者の購買比率が高く、普段は10個売れているから明日は30個売れるのではないか。
となります。似ているようで、「仮説」では起こりうるコトを想定してGoalを決めているのがお分かりでしょうか。
このように「今」から「未来」を捉えるのではなく、Goal=未来がどうなるかを情報を持って想定することが仮説構築となります。
ただし、未来がどうなるかを簡単に想定することができるなら苦労はしないと思います。そこで、少なからず得られた情報を混ぜ合わせて色々なGoalを想定し、そこから一つのGoalに絞り込んでいきます。そして可能性が高いものに標準を合わせていったものが仮説です。
これについては次のパートで詳しく説明します。
自分ゴトで捉え、インサイトを見つける
「インサイト」とは日本語に直訳すると「洞察」「物事を見抜く力」です。ただし、マーケティング用語においては、「人を動かす隠れた心理」という意味となります。
マーケティングの世界において有名な言葉として、「ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく穴である」があります。
これはハーバードビジネススクールの教授であったセオドア・レビットが1968年に出した『マーケティング発想法』の著書の中で紹介されているものです。
電動ドリルを買いに来た人は、決してそのドリルのフォルムや回転数を眺める、または飾って鑑賞するのではなく、「穴」を開けるコトの手段としてドリルというモノが欲しかった。
人が何かを買う時、ほとんどの場合がある課題を抱えていて、これを解決するためにモノを必要とします。
当塾ではこれを「ギャップ」と呼んでいますが、このギャップ、つまりどんなコトを求めているのかがインサイトとなります。
ここで、先ほど挙げた例の中で、彼女の誕生日プレゼントについて考えてみます。
13 単品管理思考法①|Tanpin-Kanriとは? でも挙げましたがマフラーをプレゼントしたら化粧品が欲しかった、というオチでした。
まず第一に、「彼女は誕生日にどんなコトを求めているのか」のGoalを考えます。
当然オシャレな雰囲気のお店で過ごしたい、高級なお店で食事をしたい、など、様々なコトが考えられます。
また、プレゼントについては普段の会話や行動の中からどんなコトがあったらより彼女が幸せを感じられるのかを考えます。
ここで「仮説」の出番です。
彼女がもっとオシャレをしたい、というコトを求めているのならば、化粧品、小物のアクセサリー、洋服など、これを満たすモノを考えていきます。
その中で、よりオシャレになるというコトを解決できる可能性が高いモノに絞り込んでいきます。
ここにあなた自身の「想い」が加われば、喜んでもらえる可能性はさらに高くなるでしょう。これが過ごすお店や雰囲気作りと重なれば、きっと素敵な誕生日を過ごすことができると思います。
「自分ゴト」というお話をすると、「自分だったら」という間違った捉えられ方をされる場合があります。
「自分だったら」という言葉は自分の価値観に重きを置くことになってしまいます。
「自分ゴト」は相手の立場に立っていたら、つまり自分を相手に憑依させてどう感じるか、どう考えるかを想定し、相手のインサイトを探ることです。
上司がプレゼンの資料を頼んで来たら、何を求めているのか(完成時期・予算・かける時間・クオリティなど)を自分ゴトで捉える。
これもまた単品管理思考の仮説構築です。
間違いを恐れない
仮説構築のポイントの最後は「間違えても修正するフレキシビリティ(柔軟性)を持つ」ことです。
先ほど述べたように、仮説はあくまでも想定されうる未来であり、確実にそれが起こる訳ではありません。
どのくらい先の未来について仮説を立てるかにもよりますが、想定したGoalがまだ先にある場合、その想定する際に使った情報が間違っていたり、新たなコトが分かれば遠慮なく修正するべきです。
彼女へのプレゼントの例でいえば、よりオシャレになるために洋服が必要、と想定していたとしても、洋服は実はたくさん持っていて、これに合うアクセサリーが無いから着ていない、というコトが分かったらアクセサリーに変えることが必要です。
このようにピボット(方向転換)する柔軟性があれば、成功の確率はより高くなっていきます。
得られた情報をネガティブに受け取りすぎて大胆な仮説が立てられない、動けないと進化や成功は遠のきます。
一度仮説を立てたからそれだけにこだわるのではなく、根幹の「想い」は変えず、「プロセス」、つまり想定されるGoalを変えればよいのです。
近年、イノベーションという言葉が広く使われ、これがビジネスには重要と言われています。
今はどこの企業にもイノベーション、または新規事業開発などの部署があり、これを担当しています。
一方でハーバードビジネススクールのクリステンセン教授の調査では、企業が行うイノベーションの約95%は失敗するといわれています。
大きな企業で、様々な情報を駆使して挑戦したとしても20個のうち1つの事業しか成功しません。
(失敗した理由はさまざまで、これの研究もされていますがここでは割愛します)
ただし、失敗を活かして次の仮説構築につなげていくことで、より成功に近づくのではないかと思います。
仮説構築における3つのポイントを今回はみていきました。
ぜひ皆さんの仕事、プライベート、人生において、「仮説」を立てる練習をしてみてください。
今回はここまでです。次回は死筋排除についてとなります。
更新を楽しみにお待ちください。
今回もお読みいただきありがとうございました。
次回は2022年4月25日更新予定です!
☆CVS実践経営塾on-line classのお知らせ☆
学びを継続して変化に対応できるスキルを身につける「場」として、在塾生および卒塾生が参加できる「on-line class」を1月からスタートしました。
4月14日に第4回を実施しましたが、少しずつメンバーも増えて振り返りや情報共有の場となってきています。
振り返りはCVS実践経営塾on-line Look Backをご覧ください。
次回は、5月19日木曜日の18:00~20:00を予定してます。
在塾生、卒塾生の方はぜひご参加下さい!お待ちしています!
(参加費は無料です)