今回は単品管理思考法、STEP⑴の番外編、「フレームワーク思考法」の続きとなります。

フレームワークとは「枠組み」「骨組み」「構造」などの意味があり、ビジネスにおいては情報を整理してこれを問題解決や意思の決定、さらには戦略の立案などに活かすことでした。
その上で前回は外部環境についてご説明していきました。今回は内部環境について、そして前回説明した外部環境と合わせた情報整理についてとなります。

内部環境/バリューチェーン

バリューチェーンとは提供する商品やサービスの付加価値が事業の活動のどの部分で生み出されるかを分析する手法です。この付加価値に注目することにより、自社の優位性がどこにあるのか、その優位性をどう活かしていくか、さらにはそれを使って他社とどう戦っていくのかを考えることができます。
この付加価値という言葉、これは主に主活動においてプラスで生み出される価値、つまり各活動で生み出される粗利益です。(下図参照)

出典:M.E.ポーター『競争優位の戦略』 ダイヤモンド社 (1987)

コンビニエンスストアのフランチャイジー(加盟店)の場合、このそれぞれの活動をフランチャイザー(本部)と役割分担をしてお客様に商品、サービスを届けています。
そして人事・労務管理、グループ店であればグループの全般管理以外の支援活動、さらには購買物流、製造、出荷物流などの多くの部分をフランチャイザーが提供し、販売、リージョナル(地域的)なマーケテイング、サービスをフランチャイジーが担いビジネスモデルとなっています。
各チェーンによって情報システム、技術、商品力(調達活動や購買、製造)なども異なり、どこが自チェーンの強みなのかを整理することでお客様にどのように価値を伝えていくかが変わってきます。
また、個店で見ると、生み出される利益は販売、マーケティング、サービスとなり、ここでどのくらいの付加価値を付けられるかがお店の存在意義となります。
情報収集においてこのバリューチェーンを使い、整理する方法として

⑴ 本部のSVさんから得られる情報、またはチェーン内会報誌などに掲載されている情報から「自チェーンの強み」は何かを確認する
⑵ より効率よく、スピーディーに販売、サービス提供を行える自グループ内、自店内の情報伝達の仕組みを作る
⑶ 販売・リージョナルマーケティング・サービスの質を高めるための店内体制を構築していく

の3つがあります。
情報伝達の仕組みについては以前からよく使われるノートやホワイトボードを活用して情報共有の仕組みを作ることも重要ですし、近年目まぐるしく発展しているデジタルツール(LINEやMessenger、Facebookグループ、ChatWork、Slack、Teamsなど)を使っていくことも有効です。
店内体制構築においては「どのように体制構築を進めるか」を整理し、順序立てて進めていく計画性が必要となってきます。

これらの活動を通して、自店での付加価値(粗利益)を最大化していくことがバリューチェーン分析の使い方となります。
ではこの強みについて、どのように見つけていけばよいのか、次のVRIO分析で確認していきましょう。

内部環境/VRIO分析

VRIO分析とは競争に優位となる経営資源(リソース)、または組織的な能力を評価し、真似されない強みを見出すことです。
平たく言えば、競争相手に簡単に真似されない、お客様に価値を提供できる能力がお店(またはグループ、自チェーン)にあるか、です。
このVRIOとはある言葉の頭文字をとったものであり、それぞれの内容は下記の通りです。

  1. Value(経済価値を⽣み出すリソース)
    外部環境の機会に対応しているか、脅威を少なくしているか等、経済価値を産むかどうか
  2. Rarity(希少性の⾼いリソース)
    その経営資源または組織能力を保有している競合は少ないかどうか
  3. Inimitability(模倣困難なリソース)
    競合が簡単にマネできるかどうか
  4. Organization(組織⼒に関するリソース)
    価値があり、希少で真似できない経営資源まはた組織能力を活かす仕組みがあるか

例えばコンビニエンスストアの場合、日々の重要の増減に対して納品の量を増やす、減らすことができます。
これをVRIO分析に当てはめた場合を考えてみましょう。

1.Valueは機会(お客様が増える)を捉えて、または脅威(お客様が減る)ことに対応して製造をコントロールできる製造工場を持っている、または外部と提携しています。これにより売上を最大化できる、または売れ残りを減らせるという点で「価値がある」と言えます。
2.Rarityではこの自社の製造工場、または外部との提携ができるチェーンは多くなく、「希少である」と考えることができます。
3.Inimitabilityは工場を作る、または外部と提携でもある程度の規模が必要であり、持っていないチェーンが簡単に真似できるとは言えません。
4.Organizationはこれを活かす情報システムの構築、配送、そして日々に発注管理などの組織能力があると考えられます。
これらの理由から、コンビニエンスストアチェーンが大手4社に寡占化されてきたのも納得できます。

これを個店で考えれば、お客様が買い物をしたいと思える品揃えや接客、綺麗さなど「価値」を競合が真似できないようにするにはどうするか、その最大のポイントである組織能力、つまり「店内体制」をどう作り上げるかとなります。例えば人が辞めない体制、従業員さんが楽しく働ける仕組み、教育システム、作業の明確な分担など。
今日やり始めて明日できることも大切ですが、それではInimitability(模倣困難)ではありません。なぜなら競合も簡単にできてしまうから。
店内体制は一つひとつを積み重ねてお店やグループの組織風土として創り上げていくことが重要です。

さて、ここまでが内部情報分析です。
ここからは前回説明した外部環境分析と合わせての情報整理について解説していきます。

SWOT分析

前回説明した外部環境のPEST分析、3C分析(こちらを参照)と、今回の内部環境のバリューチェーン分析、VRIO分析はそれぞれ大切な情報収集ですが、これだけだと情報量が多くなってどう扱っていいか難しいかと思います。
そこで、これらをさらに整理するため、SWOT分析(クロスSWOT)というフレームワークで整理していきます。
SWOT(スゥォット)はStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字です。
バリューチェーン分析、VRIO分析で出てきた自チェーン、自グループ、自店の強みや弱みをそれぞれ整理します。
PEST分析、3C分析で出てきた外部環境の機会(チャンス)と脅威(なんらかの売上利益下降要因)を整理します。
そしてこの4つの視点を掛け合わせ、今後どう対応していくかを考える手法となります。
これを下図に当てはめていきます。

自店の強みであり、かつこれからチャンスがあるものは左上の四角に書いていきます。
例えば自店の周りが高齢者が増えているエリアで、接客力があってお客様とフレンドリーに話せる従業員さんがたくさんいるお店は左上となり、これを強化していく、またはお困りごとをヒアリングしてみんなで共有し、お客様がさらに来たくなるお店作りを進めることができます。
このように、それぞれの四角に情報を整理し、何をしなければならないかを決めていく分析方法です。
ただし、これは個店、グループそれぞれで異なることに注意が必要です。先に挙げた例で、「高齢者が増えているエリア」ではお客様とフレンドリーに話せることは強みでしたが、駅近くにあるキオスク型店舗で後ろにお客様が並んでいる状況で長話をしていたら他のお客様から見ると「接客が遅いお店」という弱みになってしまう可能性があるからです。
このクロスSWOTを使う場合は「強み」「弱み」「機会」「脅威」はどう捉えるかによって変化することを忘れずに活用して下さい。

CVSのRSM分析

最後に紹介するのはコンビニエンスストアにおけるRSM分析です。
コンビニエンスストアでは日々多くのお客様が来店され、そしてそのニーズは目まぐるしく変化していきます。これを捉えて運営していくことが求められ、さらには毎日の品揃えを変化させていく必要があります。ビッグデータでの情報分析から注文をAIで行う研究や実証実験も進んでいますが、精度はまだまだ高くありません。さらには機械では予測できない需要や、これを創り出す取組みこそが求められてきます
これに対応するために行うのがRSM分析となります。

1.Region(地域)
 自店の周りの地域がどのような環境か、定量と定性の両面から分析する
2.Structure(体制・構造)
 自店の店内体制がどのレベルか、何が出来ていなくて何が出来ているのか、定量と定性の両面から分析する
3.Merchandise(商品)
 個々の商品の使われ方を知り、どのような顧客層に提案できるのかを分析する

Region
定量的な分析では人口統計や事業所数などの統計データから「来て頂いていないお客様」を探すことで、どこにチャンスがあるのかを分析していきます。
また、定性的な部分ではどんな人が住んでいるのか、どんな地域なのかを高低差や人の流れ、服装などから地域を生活者の目線で知る・感じることで、地域特性から「来て頂ける可能性のあるお客様」を探していきます

Structure
客数や客単価、時間帯別売上、さらには天候や曜日、季節、給料日などでの変化する指数などの定量的な分析から変化を知り、データから「お客様に不便を与えている売上」を探します。
定性的な分析では自分のお店がどのような立地でどのようなお客様が来店されているかを知り、店内の陳列箇所や動線を踏まえながらレイアウトを考え、「売り逃しているカテゴリー・商品」が無いかを確認します。

Merchandise
商品カテゴリーや個々の商品の性質・性能、数値、効果を把握、理解して商品特性から「お客様にお勧めしたい売上」を獲得します。

これらの分析を行って、日々のお客様のニーズに応え、運営することで地域になくてはならないお店を目指すフレームワークとなります。

これ以外にもマーケティングの4P・4C、STP分析など、様々なフレームワークが存在しますが、これはまた機会があればご説明します。
今回はここまでです。次回は仮説構築についてとなります。
更新を楽しみにお待ちください。


今回もお読みいただきありがとうございました。
次回は2022年4月18日更新予定です!


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