今日はよく質問をいただく、「人を育てるには」についてです。
このテーマは私が塾講師を業として始めた2002年から「何か最善か」を考え続け、追い求め続けていますが、未だにひとつの答えが出ない、本当に奥深いものだと感じています。
ただ、20年以上これを軸に仕事を捉えてきたからこその気づきもありました。ここでその一部をご紹介します。

人は同じではない

最近、A店長は2年前に習ったことを最近できるようになったと報告くれました。
B店長は研修で学んだことを実践し、従業員さんにそれを伝えてすぐに効果を感じているということを教えてくれました。

すぐにできる方もいます。気付くまでに時間がかかるか方もいます。また、個人の能力もあります。全ての人が全てのことをできるとは限りません。

「十人十色」と言いますが、同じことを伝えても受け取り方は個人によって大きく異なります。その個人の特性に対してどうアプローチできるか、私はこれが人材育成の重要なポイントだと思います。

人は直線的に成長しない

「ブレイクポイント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
ビジネスの場合、「爆発点」や「ティッピングポイント」と言われます。
ある一定の部分までは表面に見えない部分で知識や経験、認知、関心が蓄積されていき、ある時これが一気にできるようになる、広がっていくことを指します。
例えば皆さんは数学の公式を学んだ時、すぐに問題を解けるようになりましたか?
すぐ解ける問題もあれば、解けない問題も多かったと思います。公式を暗記すれば簡単な問題は解けますが、少し角度が変わった問題が出ると対応できないことはなかったでしょうか?
その時、「なぜこうなるんだろう」と考え、そして公式の意味を「ああ、そうか!」と理解してからは様々な問題が解けるようになった、そんな経験はありませんか?
この「ああ、そうか!」「そういうことね!」と感じられることでその公式を知識として自分のモノとして使いこなせるようになる、これがブレイクポイントです。

教える側も、教わる側も、これを意識しないと人材育成は上手く回りません。
オーナーさんや店長さんと面談をしていて、「人が育たない」「仕事が大変」とお聞きした際、深く聞いていくとこの部分を意識されていないのかなと感じます。
なぜならば業務が出来る人ほど、このブレイクポイントまで我慢できずに「自分で業務をやった方が早い」と感じて自分でやってしまうから。
例えば自分の子どもに算数の勉強を教えていて、子どもが解けないからといって自分が全て解いてしまったらその子どもは問題が解けるようになるでしょうか。
確かに「すぐ対応すべき業務」もあります。一方で「人材育成しなければいけない業務」もあります。これを切り分けることが出来ずにすべて自分でやってしまい、最終的には「人が育たない」、だから自分がいつまでも本来やるべき仕事に向き合えない
このサイクルにはまってしまって視野が狭くなり、原因を「最近の若いもんは・・・」「ゆとり世代、さとり世代だから・・・」などと外部の要因に責任を求めてしまいます。

魚を与えるのではなく、釣り方を教えよ
とは教育業界では有名な言葉です。

飢えた人に魚を与えればすぐにお腹は満たされる。一方で魚の釣り方を教えれば自分で魚を釣って一生食べていくことができる

今その業務や仕事、またはお店や会社の状況は、「飢えた状態ですぐに魚を与える必要がある」のか、それとも「魚の釣り方を教えることで自分でできるようになってもらうことが必要なのか」を考えなければいけません。
できないから魚を与えるのではなく、魚が釣れるようになるブレイクポイントまで辛抱強く続けることが大切です。

失敗をさせることが成長につながる

人を育てる際のポイントは失敗を許容することです。
教える側としては、教えたのになんでできないんだ、と考えてしまいます。しかし、先ほど挙げた数学の公式の例でも、一回教わってすべての問題を解くことは難しい。だからこそ間違えることで考え(または考えさせて)、気づきを得てできるようになっていきます。
私が思う人が成長するプロセスは下記の流れです。

学んだことをそのまま頭の中に入れておくだけでは意味がなく、実践してみなければ身につきません
そしてその実践には多くの場合、小さな失敗や少しのズレが起こります
失敗した際に、「やっぱりできないから自分でやってしまおう」ではなく、「どうやったら上手くいくか」を一緒に考える
この小さな失敗(許容できる範囲)をどうコントロールするか、さらにはフォローやフィードバック、そして再チャレンジの背中を押すこと、これがとても大切です。

私自身もそうですが、失敗することで振り返り、反省し、次に改善して自分のモノにすることで成長していきます。

もしこのサイクルをやってみても上手くいかない場合は教える側と教わる側との信頼関係、教えるテクニック(ティーチングやコーチング)、訓練方法、教わる側のモチベーションなどの要因があります。これをすべて説明するには長くなりますので別の機会に譲りますが、人の育成にお悩みの場合にはまず「失敗することが許される場面で失敗させる」ことからはじめてみてください!

今回もお読みいただきありがとうございました。次回の更新をお楽しみに! (毎週水曜日に新しい記事を更新します。)


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